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ウイリアム・メレル・ヴォーリズといえば、メンソレータムの会社を作ったおっちゃんという認識しかなかったのですが、この前、八幡でいくつか彼の建造物を巡ってから興味がわいて、少し調べてみました。
昔なつかしのメンソレータムの商標。これを作っていた近江兄弟社もヴォーリズが友人と作った会社です。滋賀県には、八幡を中心として彼が手がけた建造物が点在しており、取り壊しか、保存かで話題になった豊郷小学校の校舎も彼の代表的建築ですね(最近ではむしろケーオンで有名?)。堅田にもひっそりと彼が建てた教会が残っています。 蔦のからまーるチャペールで、とつい歌ってしまいそうになります(古ッ)。 最後に少し長くなりますが先日もリンクした内田樹さんのブログの一文(原典は神戸女学院時代の入試部長の独り言というエッセイだったと思います。)貼っておきます。 本来、高等教育のキャンパスには「誰にも邪魔されず、ぼおっと無為な時間を過ごすことができるための空間」が人数分用意されていなければならない。ぼくはそう思っています。 たぶん、ケンブリッジとかオックスフォードとかハーヴァードとかそういう大学はそういうふうになっているはずです(パリ大学は違います。フランスの大学には建物だけしかありません。でもその代わりに、校舎を一歩出ると、街には「ぼおっと」用のスペースがほとんど無限にあります。だから、パリは「知性の都」と呼ばれるゆえんなんです)。 教育とは何か、学問とは何かということがわかっていれば、必ずそうなるはずなんです。 でも、残念ながら、そのような空間的「無駄」が大学教育には死活的に重要だと考えている大学人は現代日本にはほとんどいません。みなさんすっかりビジネスマインデッドになって、「坪単価」とか「回転率」とか、そういうせこいワーディングでキャンパスデザインを論じています。さいわい、本学は「そういう空間」だけはたっぷりあります。これは設計したヴォーリズさんが「教育」というものについて深い洞察力を備えていたからだと僕は思います。本学のヴォーリズ設計の学舎には「引っ込んだところ」がやたら多いんです。ほんとに。 廊下の途中に意味不明の「へこみ」があって、古い長椅子が置いてある。 壁の裏に「隠し階段」がある。 隠し階段を登ると昼寝のできる「隠し部屋」がある。 理学館に「隠し三階」と「隠し屋上」があるのを発見したのは、ぼくが赴任して5年目のことでした。 理事室の奧に「隠しトイレ」があるのを発見するまで、17年かかりました。 「誰にも邪魔されない場所」「自分だけの隠れ家みたいな場所」をそこらじゅうに仕掛けておかないとキャンパスは機能しない。 たぶんヴォーリズさんは直感的にそう理解したんだと思います。 この大学に20年勤めて、いまでもぼくはふと廊下の角を曲がったときなんかに、この設計者のお茶目な「悪戯心」と教育についての見識の高さに驚かされます。 「ぼおっとしていること」が空間的にこれほど勧奨されているキャンパスというのは、日本でも例外的なんじゃないかと思います。 たぶん、それが「肩の力が抜けている」「無為な時間を過ごすことが得意」という本学学生のきわだった特性の涵養にもつながっているのかと思います。 (以下省略) こんなの読むと神戸女学院にも行ってみたくなりますよね。
by kwhiro
| 2011-05-17 00:07
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