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葦と棚田と自転車と、それにパーキンソン


琵琶湖岸の葦原を眺めながら自転車で走るブログです
by kwhiro
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分解された男

中学校の頃、一時期SFしか読まない時期があった。
中でも好きだったのがA.C.クラークの「地球幼年期の終わり」と
アルフレッド・ベスターの「虎よ!虎よ!」。
その頃はそんなこと知らずに読んでいたけれど
実はこの「虎よ!虎よ!」、共感覚者の話だったんだ。

共感覚者っていうのは、あれですね。
ある音を聞くと色が浮かんできたり、ある数字を見ると
決まった色がついて見えたりする人の事ですね。
一つの感覚モダリティ(例えば聴覚)から入った情報が
他の感覚モダリティ(この場合は視覚)で引き起こされる
はずの反応(この場合は色が見えてしまう)を起こす事が
ある種の人の頭の中では起こる訳です。
実際こういう共感覚を持っている人が一定の割合で
存在することは今では知られているけれど、「虎よ!虎よ!」
を書いたベスター自身はそんなことは知らなかったろう。
この「虎よ!虎よ!」ではこの共感覚者の反応を活字で
どう表すかが試みられていてそれは、子供心にもとても
斬新だった。

いくつか前の記事で紹介したシャルルボネ症候群は
一つの感覚モダリティ(この場合は視覚)からの入力が
完全に遮断された時に大脳皮質がどうふるまうかという
一つの例を示しているが、人間の脳にはこのような謎が
まだまだ秘められているのだろう。

分解された男_d0182277_9225522.jpg

それはさておき、そのベスターのもう一つの長編、「分解された男」。
ヒューゴー賞の第1回受賞作である。
実は昔読んだかどうか記憶になかった。
表紙の絵は今風にアップデートされていて見覚えは全くなし。
しかし表紙をめくると、昔ながらの創元文庫のスタイルで
扉に登場人物の名前がズラリ。
60年代の翻訳なので、さすがにちょっと古めかしい言い回しもあるが、読み始める
とすぐにそんなことは忘れてしまう。
「顔のない男」登場した時点で、やっぱり前に読んでいたことをすぐ思い出す。
しかしそこから先は最後のページまで止らない圧倒的な疾走感。

この本のすぐ後で最近のヒューゴー賞受賞作「ベガース・イン・スペイン」も読んだが
私の中では30年以上も前のこの作品の方が圧勝だった。
寡作な作家でこの二つの長編以外は手に入らないのだが
今彼が生きていたらどんな物語をつむぐのだろう。

って、よく考えたらベスター自身が共感覚者だったのかもしれないな。

by kwhiro | 2012-06-24 20:35
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